薬局の在宅医療に対する取り組み
ここでは、薬局の在宅医療に対する取り組みについてご紹介したいと思います。在宅医療が薬局の今後の経営とどう関わっていくのかを理解し、今後のキャリア選択の参考としてください。
薬剤師は、患者がいた病院から、患者がいる自宅へ。
国家的な医療費削減政策に伴い療養病床の削減が進む一方で、高齢化は急速に進行している日本においては、今後ますます多くの高齢者が病院ではなく自宅で医療や介護を受ける傾向が強まっていきます。
このような背景下において、調剤薬局にも経営方針の転換が迫られています。
以前では患者の多くは病院に療養し、通院していたので、病院やクリニックの近くに薬局を構えることで患者の来院を獲得することができました。
しかし、患者の医療現場が病院から自宅へと移るようになれば、当然薬局に来院する患者も減少していきます。つまり、今度は薬局に患者が来てもらうのではなく、患者のいるところへ薬局自身が出向いていかなければいけない時代が到来しているのです。
調剤報酬の改定
また、2012年の調剤報酬の改定も、薬局の経営をより圧迫する方向へと影響しています。
薬価のマイナス改定や基準調剤加算の基準厳格化など、薬局の収入に悪影響を与える改正が行われたことで、薬局としては新たな収入源を確保する必要性に迫られています。
在宅医療は、薬局の生き残りをかけた道
上記のような背景を基にして、薬局の今後の成長戦略として欠かせなくなってきているのが、在宅医療・地域医療の分野なのです。
在宅医療への取り組みを怠った薬局は、在宅患者調剤加算などが算定できず、新たな収入源のチャンスを失う他、既存患者の在宅医療へのシフトによる収入減により経営難に陥る可能性もあります。
薬局にとって、在宅医療分野への進出は、まさに生き残りをかけた道だと言えます。
薬局の在宅医療に対する取り組みの現状
しかしながら、このような環境の変化にも関わらず、在宅医療への取り組みが順調に進んでいる薬局はそこまで多くないという現状もあります。
2010年段階での日本薬剤師会の調査によれば、薬局の在宅医療への参加意思表明の証となる「訪問薬剤管理指導」「居宅療養管理指導」の届出については薬局の65%で行われているにも関わらず、実際に訪問の実績がある薬局は約14%にとどまっているというデータが出ています。
薬剤師は、在宅医療チームの柱となっている医師からの要請を受けてはじめて在宅医療に参画することができます。
しかし、医師と薬局との情報共有の不足により、医師側が在宅医療に対応可能な薬局の情報を把握していないケースもあれば、実績がある一部の薬局に依頼が集中してしまうといったケースなどが起こることによって、実際に在宅医療に取り組んだ実績がある薬局の割合は低い数字のままとどまっているという現状があるのです。
また、個別の薬局や医師の問題ではなく、そもそも在宅医療に対する取り組みが地域全体としてしっかりと連携・機能していないという問題点も存在しています。
そのため、今後、薬局がより積極的に在宅医療に関わり、チーム医療の一旦として地域医療に貢献していくためには、医療機関や行政、薬剤師会、医師会など地域の医療に関わる各種機関がお互いに連携し、情報を共有しながら在宅医療の仕組み・体制を整えていく必要があると言えます。
現在注目が集まっている認定薬剤師資格の一つである在宅療養支援薬剤師も、まさにこのような背景を基にして資格認定制度が設立されており、在宅医療の担い手としての薬剤師の今後の活躍が期待されているのです。
薬局としては、在宅医療分野への取り組み・進出は経営戦略上とても重要な鍵を握るため、今後は在宅医療の経験者や認定資格保有者をいかに育成・採用し、在宅医療へと参画できる体制を整えていけるかが勝負の分かれ目となるでしょう。
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