在宅医療とは?
ここでは、「在宅医療」とはそもそもどういった医療スタイルなのかについて詳しく説明していきます。在宅医療について具体的なイメージを持っていない方は、ぜひ参考にしてください。
狭義の在宅医療と広義の在宅医療
在宅医療は、狭義における定義と広義における定義に分けて考えることができます。
狭義としては、緩和ケア・緩和医療などに携わる医療従事者が、病院や薬局への通院が困難な患者の自宅や介護施設などを訪問し、医療行為を実施することを指します。
また、広義における在宅医療としては、「病院外で行う全ての医療行為」のことを指します。
病院や薬局で処方してもらった薬を自宅で服用することも含めて、通常の生活を行いつつ、医師や薬剤師の指示を基にして病院外で行う医療行為は全て在宅医療に含まれます。
実際には、「在宅医療」について語られる際は前者の狭義における「在宅医療」を指すケースが多くなります。
在宅医療の内容
在宅医療の内容には特別な制限が設けられているわけではないため、非常に幅広い医療行為が実施されています。代表的な医療内容としては、癌などの悪性腫瘍、脳梗塞や認知症などの脳疾患、呼吸器疾患に対する医療行為が挙げられます。
現在、日本の診療報酬点数に規定されている在宅療法としては下記のような療法が存在しています。
- 呼吸補助療法 在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法、在宅陽圧呼吸療法
- 栄養補助療法 在宅中心静脈栄養療法、成分栄養経管栄養法
- 排泄補助療法 在宅自己導尿療法や持続導尿や人工肛門の処置など
- 在宅注射療法 インスリンや麻薬(モルヒネなど)の注射
- 補助腎臓療法 在宅人工透析療法など
在宅医療は病院内での医療と比較すると設備面、人員面、衛生面などで課題はあるものの、患者の家族による日常の継続的なケアと、定期的に訪問する医療従事者による医療を組み合わせることで、現在では病院とほぼ同様の治療を受けることができるようになってきています。
また、在宅医療は、患者ひとりひとりの状況に応じて医療体制や医療行為の内容を個別に設計する形になるため、「オーダーメイド医療」と言われることもあります。
在宅医療の担い手とその役割分担
在宅医療には、薬剤師だけではなく医師や看護師、栄養士など様々な医療従事者が参画しています。かつては病院という場所で一元的に提供されていた医療サービスが、患者の自宅という「病室」へ分散して提供される形になり、病院という機能が地域全体の機能へと拡大したというイメージで考えると分かりやすくなります。
在宅医療の主な担い手としては、下記の医療従事者が挙げられます。
在宅医療の担い手 | |
名称 | 内容 |
訪問診療または往診 | 医師が定期的・計画的な診療(多くは月に2~4回)により、在宅患者の病状管理を行う。容態悪化時には随時訪問し診療も行う。 |
訪問看護 | 訪問看護師の定期的・計画的な訪問により患者の主に医療的な処置、ケアを行う。その業務範囲は非常に幅広いが、家事援助や単なるマッサージなどは多職種が担うものとされており、業務外(報酬対象外)とされている。 |
訪問歯科診療 | 歯科医師が在宅患者を訪問し歯科診療を行う。訪問診療車に診療所と遜色ない設備を擁し、在宅でも十分な歯科診療を提供できる歯科診療所も存在する。 |
訪問歯科衛生指導 | 歯科衛生士が在宅患者を訪問し歯科衛生指導を行う。単なる歯磨き指導に留まらず、食事摂取を継続していくための様々な助言指導も行う。 |
訪問リハビリテーション | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が定期的・計画的に在宅患者を訪問し、必要なリハビリテーションを提供する。単なる機能訓練に留まらず、在宅生活を維持しQOLを向上することを重視する。 |
訪問薬剤指導 | 薬剤師が在宅患者を訪問し、処方されている薬剤についてその正しい服薬法等について指導助言する。 |
訪問栄養指導 | 栄養士が在宅患者を訪問し、療養上必要な栄養・食事について助言指導する。 |